SUNNYDAY KETCHUPブログ 忍者ブログ
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ひか
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女性
自己紹介:
2009年5月第一子出産。主婦のような感じで生活中。
最近またちょっと真面目にイラストとか描いてます。
ブログはほとんど放置ですが、最近ツイッターはそれなりに活用しておるので、こちら↓で生存の確認をして下さい。
ついったー。
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2018/10/19 (Fri)
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2007/10/02 (Tue)
バスの時間までしばらくあったので、少し時間を潰そうと思って路地を入った。
人を訪ねる予定だったけど、指定の時間は曖昧だったし、ちょっと位なら待たせても構わないような気でいたから、気が向くままに歩いて行った。
どこかの南国だか、アジアの国だかの雑貨を扱う店に入ろうとして、呼ばれた気がして振り返った。
そこにあったのはあの店だった。
─ひさしぶり。さすがに、もう来ないかと思ってたんだけどね。
カウンターには、彼がいた。
─僕も、そう思ってました。でも・・・
彼は、口の端を上げて笑いながらうなづいて
─まあ、思ったようにはいかないもんだろうね。
─今日は、約束があるんです。だからあんまりのんびりは。
─いいだろう。待っててくれるよ。
僕の言う事に構わず、彼はコーヒーを準備しながら座るように促した。
確かに彼の言う通り、待っててくれるだろうと思った。もとより、はっきりした時間を決めていないのだ。いつ行ったところで遅れた事にはならない。
僕が躊躇したのは、向こうがどうかよりも自分の事だった。ここで座って落ち着いてしまったら、またついつい長居をするかも知れないし、下手したら約束の場所に出向くのがおっくうになってしまうかも知れない。そうなって、でも約束を破れなくて、釈然としない気持ちで向かって行くのは憂鬱なものだ。
それを見透かしたように、彼は言った。
─取り返しがつかなくなると感じるなら行けばいい。そう感じないなら、いつ行っても問題ないだろう。
そして付け加えた。
─あるいは、行かなくても。
─取りかえし?
─平たく言えば、そうだな。後悔するかしないか。もちろん、予測しかできないがね。
平たく、と彼は言ったけど、ずいぶん漠然とした説明だと思った。後悔は後からするものだ。今までもそうだった。そして、自分を責めたり、悔やんだりする。予測できないからそうなるのだ。そして、「しまった」と思ってからでは何を考えたってしょうがない。
─で、どうする?
僕はとりあえず椅子にかけた。少なくとも、このままここを立ち去るのは後悔を伴う。仮にこの先、もっと大きな「しまった」があったとしても。
前に来た時みたいに注文を聞いたりする事もせずに、彼は当たり前のように豆を選んでコーヒーを煎れた。
出されたコーヒーは、苦さも酸味もちょうど良く、砂糖もミルクも全部ちょうど良く入ってるコーヒーだった。煎れたてのはずなのに、何故か温度もちょうど良い。
─注文を聞かないんですね。
─聞いたら、違うものを注文したかい?
ひと口飲んで考えた。
もしかしたら違う事を言ったかも知れない。でも、それを飲んでから間違えたと思ったかも知れない。
どっちにしても、出されたものが本当に「ちょうどいい」と思ってしまった後だから、考えたってしょうがない。
─いや、これでいいんだと思います。聞かれたらこれを注文したと思います。多分だけど。
─そうだね。そうだろう。
彼は満足そうな顔をした。
ちょうどいいそのコーヒーは、飲む程に増々ちょうどいいと感じるような味だった。前にもここで出された事があった気がしたけど、記憶をたどっても同じ味はなかった。
あのまま立ち去らなくて良かった。そう思った。
時計を見ると、バスの時間が迫っていた。
─久しぶりなのにごめんなさい、もう行きます。
─次のバスじゃだめかい?
慌てて立ち上がった僕に彼は聞いたけど、それは名残惜しそうな響きじゃなかった。なんだか少し意地悪な、僕を試すような聞き方だった。
─だめじゃないけど。でも、やっぱりこのバスで行きます。
彼は、笑顔でうなづいた。
いつもの笑い方とは、少し違っていた。


特別の地図を持って
約束の街へ向かった
示された道と違っていても
辿り着けると知っていた
見えない先を知る事も、振り返った景色を忘れる事も、必要ないんだと思う。
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