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ひか
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2009年5月第一子出産。主婦のような感じで生活中。
最近またちょっと真面目にイラストとか描いてます。
ブログはほとんど放置ですが、最近ツイッターはそれなりに活用しておるので、こちら↓で生存の確認をして下さい。
最近またちょっと真面目にイラストとか描いてます。
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「私はクリエイターなのよ」って顔して暮らしてたい、そんなこのごろ。
2025/02/02 (Sun)
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2008/02/09 (Sat)
「雪が降るんじゃなかったの?」
取引先の契約違反を咎めるような口調で、入ってくるなりさやちゃんは言った。
“こんばんわ”も“おじゃまします”もなく、それが第一声だ。
見れば、全身ずぶ濡れで、丸めたティッシュみたいに情けないことになっている。
「傘を持ってなかったの?」
訊ねてから、今のはちょっと呑気な反応に見えたかな、と反省しつつ、僕は立ち上がってタオルをとって来た。
「だって、」
さやちゃんは口をとがらせて言う。
「だって、雪だっていう話だったじゃない。」
適当に箪笥から出したタオルは年始の挨拶にもらったやつで、“沖田酒店”と書いてある。
「雪でも、傘はいるでしょ?」
「いらないわよ。」
とにかく、さやちゃんは怒っている。
別に、僕が雪の予報を出した訳ではないし、それをさやちゃんに伝えた訳でもないのだけど、今ここに僕たち二人しかいない以上、さやちゃんの怒りの矛先は僕らしいのだ。
それにしたって、今日のような日は傘を持つべきだ。
怒られるのもかなわないけど、さやちゃんが風邪をひくというのもいただけない。
おそらく、さやちゃんの知っている雪は、もっと寒い所で降るような雪だ。
サラサラとして、細かくて、一度積もっても、また風で舞い上がるような、軽くてキラキラの雪なのだ。
平野部お得意の、雨まじりの雪とか、べちゃっとした雪とか、ましてやミゾレなんてもの、きっとさやちゃんは知らないのだろう。
僕は、できるだけさやちゃんの神経を逆撫でしないよう注意を払って、機嫌をとるために新しいタオルをもう一枚用意した。
それは、ちゃんとお金を出して買った、花柄で厚みもある、しっかりしたタオルだ。
“沖田酒店”でしゃくしゃくと頭を拭いたせいで、さやちゃんの髪はすっかりくしゃくしゃだったので、その上からやさしく、花柄厚手をかぶせてあげた。
「あのね、さやちゃん」
「何?」
「今日は残念だったけど、雪はきっとまた今度降るから、ね。」
「うん。」
「ただね、」
「うん。」
「雪でも、傘は持ってた方がいいから、今度からは雪でも傘を持っておいで。」
「何色の?」
「色?」
「うん、傘の色。」
「・・・・・白と水色以外なら、いいんじゃないかな。」
「・・・・・わかった。」
さやちゃんは、やけに神妙にうなづくと、まったくおかしなタイミングで
「おじゃまします。」
と、おじぎをしながら丁寧に言った。
「いらっしゃい。お茶をいれようか。」
するとさやちゃんはフルフルと首を横にふって、持っていた手提げを差し出すと
「買って来たの。」と、中身をテーブルに並べ始めた。
出て来たのは、駅の売店で売ってるカップのお酒。お酒ばっかり、全部で6つ。
「お酒?」
「うん、雪だと思ったから。」
そうか、残念だったね、と僕が言ったら
「いいの。雪なんかなくたって。」と、一つを手にとった。
「夜は雪に変わるかもしれないから、全部飲んじゃダメだよ。」言うと、「うん」だか「ううん」だかわからないような、「ふふん」みたいな返事をしてから、美味しそうに、ひとくち目を飲んでみせた。
「サラサラの雪が降るといいね。」
さやちゃんの返事は、また「ふふん」だった。
“こんばんわ”も“おじゃまします”もなく、それが第一声だ。
見れば、全身ずぶ濡れで、丸めたティッシュみたいに情けないことになっている。
「傘を持ってなかったの?」
訊ねてから、今のはちょっと呑気な反応に見えたかな、と反省しつつ、僕は立ち上がってタオルをとって来た。
「だって、」
さやちゃんは口をとがらせて言う。
「だって、雪だっていう話だったじゃない。」
適当に箪笥から出したタオルは年始の挨拶にもらったやつで、“沖田酒店”と書いてある。
「雪でも、傘はいるでしょ?」
「いらないわよ。」
とにかく、さやちゃんは怒っている。
別に、僕が雪の予報を出した訳ではないし、それをさやちゃんに伝えた訳でもないのだけど、今ここに僕たち二人しかいない以上、さやちゃんの怒りの矛先は僕らしいのだ。
それにしたって、今日のような日は傘を持つべきだ。
怒られるのもかなわないけど、さやちゃんが風邪をひくというのもいただけない。
おそらく、さやちゃんの知っている雪は、もっと寒い所で降るような雪だ。
サラサラとして、細かくて、一度積もっても、また風で舞い上がるような、軽くてキラキラの雪なのだ。
平野部お得意の、雨まじりの雪とか、べちゃっとした雪とか、ましてやミゾレなんてもの、きっとさやちゃんは知らないのだろう。
僕は、できるだけさやちゃんの神経を逆撫でしないよう注意を払って、機嫌をとるために新しいタオルをもう一枚用意した。
それは、ちゃんとお金を出して買った、花柄で厚みもある、しっかりしたタオルだ。
“沖田酒店”でしゃくしゃくと頭を拭いたせいで、さやちゃんの髪はすっかりくしゃくしゃだったので、その上からやさしく、花柄厚手をかぶせてあげた。
「あのね、さやちゃん」
「何?」
「今日は残念だったけど、雪はきっとまた今度降るから、ね。」
「うん。」
「ただね、」
「うん。」
「雪でも、傘は持ってた方がいいから、今度からは雪でも傘を持っておいで。」
「何色の?」
「色?」
「うん、傘の色。」
「・・・・・白と水色以外なら、いいんじゃないかな。」
「・・・・・わかった。」
さやちゃんは、やけに神妙にうなづくと、まったくおかしなタイミングで
「おじゃまします。」
と、おじぎをしながら丁寧に言った。
「いらっしゃい。お茶をいれようか。」
するとさやちゃんはフルフルと首を横にふって、持っていた手提げを差し出すと
「買って来たの。」と、中身をテーブルに並べ始めた。
出て来たのは、駅の売店で売ってるカップのお酒。お酒ばっかり、全部で6つ。
「お酒?」
「うん、雪だと思ったから。」
そうか、残念だったね、と僕が言ったら
「いいの。雪なんかなくたって。」と、一つを手にとった。
「夜は雪に変わるかもしれないから、全部飲んじゃダメだよ。」言うと、「うん」だか「ううん」だかわからないような、「ふふん」みたいな返事をしてから、美味しそうに、ひとくち目を飲んでみせた。
「サラサラの雪が降るといいね。」
さやちゃんの返事は、また「ふふん」だった。
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