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ひか
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女性
自己紹介:
2009年5月第一子出産。主婦のような感じで生活中。
最近またちょっと真面目にイラストとか描いてます。
ブログはほとんど放置ですが、最近ツイッターはそれなりに活用しておるので、こちら↓で生存の確認をして下さい。
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ついったー。
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「私はクリエイターなのよ」って顔して暮らしてたい、そんなこのごろ。
2025/02/03 (Mon)
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2007/09/28 (Fri)
気が付くと、いつかの店の前だった。彼に会ったあの店だ。
ちょうどいい、そういえばそんな気分だったんだ。
僕は迷うことなく店の扉をあけた。
思った通り、彼はそこにいた。入り口の真正面にある、直角に区切られたカウンターの中。コーヒーサイフォンが、こぽこぽと泣いている。
—予想通りだなぁ。
言ったのは、僕ではなくて彼だった。そしていつもの笑い方。
—来る頃だと思ったよ。最近は色んな人が訪ねて来るし。
そして一呼吸おいてから、
—何を?
—あ、コーヒーをひとつ。色んな人って、他にも誰か来たんですか?
僕の質問に口では答えず、彼はコーヒーを注ぎながら軽く視線だけを横へやった。
カウンターの一番端に、ユリさんがいる。
いつからいたんだろう。入ってきた時は気づかなかった。
モーヴのハイネックセーターを着て、今日は髪を下ろしてる。手元にはグラスがひとつ。
緑がかった透明の飲み物は、見たことのないものだ。
ユリさんは僕をみて、静かに挨拶する。
—久しぶり。驚いたわ。
—何が?
—あなたにここで会うなんて予想してなかったもの。なんだか似つかわしくないし。
似つかわしくないとは、どういう事なんだろう。店の雰囲気だろうか。
首をかしげる僕に、ユリさんが言う。優しい笑顔で。
—飲む?
ユリさんの手元の、華奢なグラス。まだほとんど手をつけていないみたいだ。
ちょっと考えて、僕は断った。いい言葉が思いつかなくて、ただ首を横にふった。
ユリさんは、笑顔のままだ。
—予想通りだなぁ。
言ったのは、また彼だった。僕の前に、素焼きのコーヒーカップを静かに置く。
—飲んだらすぐに行くんだろう?
—いえ、別に急いではいないし、すぐってつもりは。
—ああ、別に急ぐ必要はないさ。でも、ずっとここにいる気もないんだろう。
それから、ちらりとユリさんの方を見やって、すぐに僕へ向き直る。
—だから、君はあんなものは飲まなくていい。
コーヒーに砂糖を入れる。ミルクを入れる。かき混ぜるとすじになる。それから溶け合って、薄褐色。
僕はただ納得したふりをして、小さくうなづいた。コーヒーを飲む。
彼は僕の行き先を知ってるんだろうか。話したことはないように思う。
今となっては僕だって、自分が本当にそこを目指してる自信なんてない。
でも、何もかもわかったような顔でいる彼を見てると、本当は全てがはっきりしているようにも思う。
—君には、今日は特別のコーヒーをいれてやったんだ。
今度は本当に納得して、僕はうなづく。確かに、それは特別のコーヒーだった。
それは例えば僕たちが
忘れかけたはじまりの時
君を見つけた分岐点には
今でもきっとあの歌が流れる
たどり着いたところに腰をおろせば、そこを目指してたと思えるだろうか。
僕は迷うことなく店の扉をあけた。
思った通り、彼はそこにいた。入り口の真正面にある、直角に区切られたカウンターの中。コーヒーサイフォンが、こぽこぽと泣いている。
—予想通りだなぁ。
言ったのは、僕ではなくて彼だった。そしていつもの笑い方。
—来る頃だと思ったよ。最近は色んな人が訪ねて来るし。
そして一呼吸おいてから、
—何を?
—あ、コーヒーをひとつ。色んな人って、他にも誰か来たんですか?
僕の質問に口では答えず、彼はコーヒーを注ぎながら軽く視線だけを横へやった。
カウンターの一番端に、ユリさんがいる。
いつからいたんだろう。入ってきた時は気づかなかった。
モーヴのハイネックセーターを着て、今日は髪を下ろしてる。手元にはグラスがひとつ。
緑がかった透明の飲み物は、見たことのないものだ。
ユリさんは僕をみて、静かに挨拶する。
—久しぶり。驚いたわ。
—何が?
—あなたにここで会うなんて予想してなかったもの。なんだか似つかわしくないし。
似つかわしくないとは、どういう事なんだろう。店の雰囲気だろうか。
首をかしげる僕に、ユリさんが言う。優しい笑顔で。
—飲む?
ユリさんの手元の、華奢なグラス。まだほとんど手をつけていないみたいだ。
ちょっと考えて、僕は断った。いい言葉が思いつかなくて、ただ首を横にふった。
ユリさんは、笑顔のままだ。
—予想通りだなぁ。
言ったのは、また彼だった。僕の前に、素焼きのコーヒーカップを静かに置く。
—飲んだらすぐに行くんだろう?
—いえ、別に急いではいないし、すぐってつもりは。
—ああ、別に急ぐ必要はないさ。でも、ずっとここにいる気もないんだろう。
それから、ちらりとユリさんの方を見やって、すぐに僕へ向き直る。
—だから、君はあんなものは飲まなくていい。
コーヒーに砂糖を入れる。ミルクを入れる。かき混ぜるとすじになる。それから溶け合って、薄褐色。
僕はただ納得したふりをして、小さくうなづいた。コーヒーを飲む。
彼は僕の行き先を知ってるんだろうか。話したことはないように思う。
今となっては僕だって、自分が本当にそこを目指してる自信なんてない。
でも、何もかもわかったような顔でいる彼を見てると、本当は全てがはっきりしているようにも思う。
—君には、今日は特別のコーヒーをいれてやったんだ。
今度は本当に納得して、僕はうなづく。確かに、それは特別のコーヒーだった。
それは例えば僕たちが
忘れかけたはじまりの時
君を見つけた分岐点には
今でもきっとあの歌が流れる
たどり着いたところに腰をおろせば、そこを目指してたと思えるだろうか。
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