SUNNYDAY KETCHUPブログ 忍者ブログ
プロフィール
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ひか
性別:
女性
自己紹介:
2009年5月第一子出産。主婦のような感じで生活中。
最近またちょっと真面目にイラストとか描いてます。
ブログはほとんど放置ですが、最近ツイッターはそれなりに活用しておるので、こちら↓で生存の確認をして下さい。
ついったー。
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2018/10/19 (Fri)
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2007/09/29 (Sat)
とにかく、めくらめっぽう走ってきた。どこを通ったかすらわからない。
だから、見覚えのある場所に出たときは心の底から安心した。
目の前にあったのは、あの店だ。
扉をあけて中へ駆け込む。カウンターの中には、やはり彼がいた。
—いらっしゃい。
息をきらして、明らかに僕の様子は普段と違っていたはずだけど、彼はそんな事意に介さないようだった。いつも通りに僕に席を勧める。
—コーヒーでいいかい。
僕はだまって頷き、出されたコップの水を一気に飲んだ。
氷が、からんと音をたてる。
—大変そうだなあ。
大変そう・・・突然、うしろめたい気分になる。大変なのは僕じゃない。
彼の言葉に答えないまま、僕は思い返す。・・・手をはなした瞬間。最初の扉をあけた瞬間。その扉を閉じた音。その直前、僕を呼ぶ声。
—大変なのは、僕じゃないんです。僕はちっとも大変なんかじゃない。
—そうかい。そうは見えないけどね。
コーヒーカップが目の前に置かれた。僕はそれを両手で包む。手のひらがじんわりと温かい。
—豆を変えたんだ。どうだい?
口にしたコーヒーは、だいぶ酸味が強いようだった。普通に「コーヒー」と注文して出てくるコーヒーにしては、変わった味だと思った。
それで、正直にそう伝えた。
彼は、口の端を少し上げて笑う。
—でも、君の口には合うかと思ってね。
もう一口、コーヒーを飲んだ。今日は砂糖もミルクも入れなかった。
言われてみると、確かにそうだ。この味は僕の口によく合っている。特に、今みたいな僕には。
ふと、彼は知っているんじゃないのかと思った。僕が逃げ出してきたという事を。
でも、すぐに思い直す。知っていたら、きっとあんな風に笑わない。優しくコーヒーなんか、出すわけがない。
なんだか、ここで自分がコーヒーを飲んでいる事すら悪い事のように思えた。だけどとにかく、僕はあれ以上は進めなかったんだ。
その事を、誰よりもこの僕が、本当によく知っている。
もう一度彼をみると、やっぱり彼は笑っていた。
─本気で逃げるつもりなら、全力で逃げる方がいい。
彼は、僕を責めないようだった。

背中から聞こえる声は
魔法をはらんでにじんでいった
下りきった坂道の下には
小さく僕達の名をきざもう


逃げ切るためにこれから僕は、どれだけ走ればいいんだろう。
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