SUNNYDAY KETCHUPブログ 忍者ブログ
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ひか
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2009年5月第一子出産。主婦のような感じで生活中。
最近またちょっと真面目にイラストとか描いてます。
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ついったー。
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2024/04/23 (Tue)
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2008/06/24 (Tue)

「落下する夕方」江國香織 角川文庫

江國香織さんの本はけっこう読んでいるんですが、これほど何度も読んでいる本は他にないです。もう、何回読んだか数えていませんが。
何となく、長時間電車に乗る時なんかにとりあえず鞄に入れてしまう。ストーリーはもちろん、シーンによってはその文章まで記憶していたりもしますが、決して退屈はしないのです。
どんなストーリーかと言えば、文庫に収録された合津直枝さんの解説にそのものズバリ、一言で表したフレーズがありました。
「ひとりの女性がゆっくりゆっくり時間をかけ(なんと、15ヶ月)失恋してゆく物語」
その言葉を念頭に置いて、改めて表紙デザインと作品タイトルを見てみれば。
なるほど。眠たげな夕方に、ゆっくりゆっくりと落下していくイメージが、ぴったりこの物語と重なるのです。
8年間付き合った恋人が、他に好きな女ができたと言って家を出てしまう。
入れ替わりに同居人として転がり込んで来るのが、他ならぬその女。
それは、とんでもない大騒ぎに発展して然るべきエピソードのはずなのに、この物語には全く「大騒ぎ」は似合わない。
奇妙な三角関係の毎日が、ゆっくりゆっくり流れていく。

何故、何度も読んでも飽きないかと言うと、「物語」を読んでいるという感覚がしないから。
気に入りの絵画を部屋に飾って、気が向いた時に鑑賞しているような感じ。
それは特別奇抜な絵ではなくて、特別凝った絵でもなくて、ただ微妙な色使いとか、柔らかいタッチとかが、じっくり見る度に何だか味わい深い。そんな絵。
だから、もう結末がわかっていても、登場人物の台詞を記憶してしまっていても、退屈してしまう事なんかはないのです。
例えば、なんだかじんわりと味わってしまうのはこんな筆遣い。
「あれは秋で、足首まで埋まるほどの落ち葉で、がさがさと音を立てて歩きながら、ここにしようここに住もう、と私が言った」
とか。
「ABCDEFG、HIJKLMNOP、の、LMNOP、の部分を、華子はエレメのピー、と発音した。」
とか、とか、とか。
一冊の本の中に閉じ込められた、えも言われぬ手触りを、ただ何度も何度も味わいたくなる。そういう本です。
そして、そのえも言われる手触りは・・・「哀しい」とか、「楽しい」とか言う、わかりやすい言葉には置き換えられないものなのだけど、時々、「お、なんだかこういうのは知っているぞ」と、不意に思い当たったりして、それがまた、じんわりしたいい感じなんです。
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