じいさんと老犬が気になる

仕事の帰り駅からの道を歩いてると、よく、犬を散歩させてるじいさんとすれ違います。

漫画日本昔話に出てくるくらい、腰の曲がった、まさしく絵に描いたようなじいさんです。
連れている犬は、シェットランドシープドックとダックスフンド。
これまた、絵に描いたような老犬なのです。

一般的な犬の散歩では、犬はどんどん前へ行こうとしたり、すれ違う人に興味を持って横へそれたりして、それをちゃんと律するために飼い主はリードを持っているのはずなのですが、
絵に描いたようなじいさんと、絵に描いたような２匹の老犬は、まったくすばらしく、寸分違わぬペースで歩いていて、決して１人と２匹の距離が変化する事がないのです。

じいさんの真後ろを歩くシェットランドシープドックと、真横を歩くダックスフンドは、自分たちの周りを取り巻く世界にある雑多なものなど、何一つ気に留める風もなく、ただ前を見てひたすら歩いているのです。

そして、当然じいさんも、やはり何一つ気に留める風もなく、私の1/3くらいのスピードで黙々と散歩をしているのです。

そのため、じいさんと２匹の犬とを繋ぐリードは、常に平仮名の「し」の字にきれいにたわんでいて、それがあんまり見事なので、いつもすれ違った後、しばし振り返って見送ってしまいます。


その後ろ姿はすっかり、黄金比の長方形くらい完成されたものに見えていて、私などはもう、感心するしかないのでした。